「紅一点論(アニメ・特撮・伝記のヒロイン像)」斎藤美奈子・著
久々に膝を叩くような面白さと読み応え、読後の爽快感を味わえました。
アニメ・特撮に関しては大昔の作品まで例として挙げられていて(リボンの騎士とかサリーちゃんとかウルトラマンとかヤマトって何十年前の作品だよ…)、具体像が掴めない部分もかなりあったせいか今ひとつでしたが、伝記編はとても面白かった!
(エヴァンゲリオンなんかはリアルタイムで熱心に見ていてそれなりに思い入れの強かった作品なのだが、この本の中に書かれている考察は私にとってたいして面白いものではななかった)
(宮崎作品のヒロイン考察に関しては、私が宮崎作品に『宮崎作品』という額面以上の思い入れをまったく持っていなかったお陰か興味深く読めました)
しかしこの文庫本の解説を書いていらした姫野カオルコさん同様、私もこの本を読むまで斎藤美奈子さんのことをミス・ミナコ・サイトウだと勘違いしていました…!
わざわざ著者プロフィールに「ミス・ミナコ・サイトウとは別人」と書かなければいけないなんて、相当多くの人に間違われたのでしょうね。
私もゴメンナサイ。

子供向けの伝記・偉人伝の類の胡散臭さ・捏造臭は相当なものですが、「じゃあ本当のところはどうなんだ?」と、酸いも甘いも噛み分けたい(※ここは希望であろう)大人向けの本を探して調べるまでの熱意はありません。
偉人像へのアンチテーゼとして書かれた書物は、また「人間臭さ」を履き違えてスキャンダラスな面ばかりを殊更オーバーに前面に押し出しているような印象があるし…。
(エゴン・シーレの生涯を描いたある映画はひどかった)
(勢いムンクの映画も見る気をなくした)
しかし伝記・偉人伝に登場する女性の代表格選手(?)、ナイチンゲール、キュリー夫人、ヘレン・ケラーの「語られない部分の生涯」に関する本書の記述・考察は文句なしに面白かったです♪
ナイチンゲールって絶対単なる聖女じゃないと思っていたのですよ。なんと言うか直感で。
看護婦さんは聖母と慈愛の塊のような人である、という認識も安直すぎるし。
この本を読んで、「やっぱりそういうしたたかな辣腕の女実業家だったか…!」と会心。
かなり保守的でもあったようです。
彼女が当時の女性の社会進出に対して否定的だっというエピソードも「なるほど」と頷ける。
そう思っていたのはナイチンゲールに関してだけなのですが、私は別に偉人の「偉人らしからぬ人間臭い部分」を暴いた書物を読んで、「ほうれ見ろ!」と溜飲を下げるわけではなく、「やっぱりこの人は実在する生身の人間だったんだ」と安堵するような気分になりました。
キュリー夫人が愛情は深くても母親業がいささか不得手だった事、時には心無いスキャンダルにも襲われるような恋愛ロマンに満ちた生涯であった事、2人の娘達はそんな母親を別に恨むでもなく成長した暁にはそれぞれがジャーナリスト・学者への道を進んだ事、その後に彼女達が物理学という男社会の紅一点的な偉人である母親以上に味わうヒロイン(紅一点)としての苦悩。
ヘレン・ケラーは何故他の偉人とは違ったジャンルに位置されて、フルネームで記されるのか。
彼女達をヒロインたらしめた要素とは一体何か。

勧善懲悪的でなくてはならないという理由もあるのか「歪曲・捏造によって神格化され、聖人像を作り上げられる」という宿命を持つ伝記・偉人伝を取り扱いながら、「聖に隠された俗悪の部分の暴露」というありがちな方向に走らず、彼女達の功績や生涯から「男社会における紅一点」を分析する事に徹した伝記編。
「女の社会進出を阻む敵」は「男社会」ではなく「男社会で成功した女」…?
面白いので是非お奨めしたい1冊です。

「もののけ姫」のサンとエボシの確執に関する記述は抱腹絶倒。
宮崎信者よ、読むがいい!
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by yuzuruha_neko | 2004-09-27 23:55 | 読書・漫画・TV
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